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【レポート】士業の未来を描くHonors全国カンファレンス2025 !―AI、経営、そして共創―

Honors

10月17日(金)、東京・品川にて、全国のHonorsメンバーが一堂に会する年に一度の学びと交流のカンファレンスが開催されました。少し肌寒い秋の朝。会場ホールには、名札を胸に、資料を手に静かに席につくメンバーの姿がありました。税理士、公認会計士、司法書士、行政書士、社労士、弁護士…。関西や北陸でお会いした方とも思わぬ再会に、胸が温まります。

今回のテーマは「2030年の士業像」。生成AI、海外支援、組織づくり――未来の士業に求められる力を探るプログラムが続きます。開会にあたり、Honors代表の福本から「士業の知恵を集結し、日本を支える源になる」というHonors創業の精神が改めて語られ、会場の空気がすっとひとつにまとまりました。

■ 生成AIを相棒にする未来 ― 佐藤知正教授 講演

午前中のテーマは、「生成AI」。東京大学大学院情報理工学系研究科の佐藤知正名誉教授による講演が行われました。佐藤教授は、生成AIを“知恵を出す相棒”として活用する方法を語ってくださいました。人間の作業を生成AIに置き換えられてしまうという「競争」ではなく、ともに作戦会議をしていく「共創」に生成AIを使っていくことが、これからの社会には必要なことではないかという提言でした。

講演では、既存知を再結合することで新たな提案が可能になったことや、「学習する」という特性によるAIを活用した業務や事業運営について具体例でわかりやすく説明してくれました。佐藤教授は「AI神様」というユーモラスな比喩で特徴を紹介。「ご神託のように答えるが、嘘もある」「壁打ち相手に最適」「本質は理解していない」「いじめて鍛えるべき」などと説明してくれました。
私たちは、良い問いを立て、データという“供物”を与え、選別する。そしてさらにその結果を投入することで学んでもらうことがポイント。生成AIを“助手”として磨き、共に歩む視点の大切さを実感することができました。

■ パネルディスカッション:AI活用最前線の現場が語るリアル

講演の後は、パネルディスカッション。税理士法人あさひ会計事務所の松田茂先生、東京経営労務管理事務所の今井恒先生、株式会社I-techの佐々木勇毅さん、株式会社オービックビジネスコンサルタントの田中亮宇さん、株式会社BlueLampの白石達也さん、そして佐藤名誉教授が「AIの活用最前線」をテーマに、士業ではどういう活用をするのか、その具体事例を紹介してくれました。

白石さんは、LLMからFunction Calling、ReAct、そしてマルチエージェントへと進化をし、処理能力が大幅にアップし止まらずに動くようになったというAIの変遷について、松田先生は文書や書類、スライドなどの作成や営業の下調べ、採用企画の立案などといった、現場での効果について、今井先生は、給与計算や給与データなどのAI利用の効果とともに昇給判断など人が判断すべき点について、佐々木さんは三段階に分けたAI導入のコツ、なかでもKPI設定の重要性について、田中さんは実際に事務所で導入する際のステップを整理して説明いただきました。現場で導入している士業の先生方とAIの専門家による具体的なお話に、会場のメンバーさんもイメージが明確になったのか「どんなツールを使えばいい?」「AIが苦手なスタッフの育て方は?」などたくさん質問が出ていました。

■ 海外展開と士業の新たな役割 ― 北川氏講演

午後の始まりはワークショップから。隣同士の会話が増え、名刺交換の輪が広がっていました。
場が温まってきたなか、ステージには株式会社きらぼし銀行海外戦略部の北川祐樹さんがご登場。中国・ベトナム・タイと拠点を広げる中で、日本企業の海外進出のリアルを語られました。

特に海外企業とのマッチングでは言語の壁や文化の違いがあり、紹介後に連絡が途絶えるケースが多かったり、中韓と比較して意思決定のスピードが遅いといった課題があるそうです。きらぼし銀行では、先に現地のニーズを把握するという方法で海外進出を行っており、士業との協業も増加している状況を説明され、契約、財務、人材制度など専門性による伴走支援の重要性を強調されていました。

■ 実業が士業を強くする ― 井上先生 & 増子先生

次のパネルディスカッションのテーマは、「士業×実業のリアル」。Take Offer会計事務所の井上剛夫先生とあすなろ司法事務所の増子律夫先生に登壇いただき、実業も行っている立場だからこそ語れる「実業をする利点」をお話いただきました。
井上先生は、アパレル事業を自身で立ち上げ、創業融資や資金繰り、人材管理を経験したことが、クライアントの相談への対応に変化をもたらしたそう。「できるかどうか」ではなく「どう実現するか」と共に考える姿勢が育ったと話します。

増子先生は、美容事業や小売事業を展開。最大10店舗を運営する中で、現金管理や人材育成、産休復帰のサポートなど、経営現場特有の判断が求められる場面に直面したといいます。だからこそ、井上先生同様「実践できるか」という視点でクライアントワークを行えるようになり、信頼関係を強固に築けるようになったと話しました。

■ デロイトグループの実例に学ぶ2030年の士業 ― 宮川氏講演

後半では、デロイトトーマツグループの宮川文彦さんが登壇。業界を牽引するデトロイトグループの成長の軌跡を紹介いただきながら、事業成長のヒントを提示いただきました。「AIやDX活用は近未来では“前提条件”となり、差別化要素ではなくなる」と語り、その上で士業に求められるのは、データの高度な管理とデータを活用した提案力、インダストリーに深く入りこむ専門性、他士業・他業種と連携して総合的に支援する体制、人材確保競争と人事評価・キャリア設計の必然性だと強調してくれました。士業事務所でもM&Aが増加しているらしく、人材獲得競争も加速しているという視点は、参加者にも大きな刺激となったのではないでしょうか。

■「共創する士業」へ

今回のカンファレンスは、AIとの共創、事業の現場理解、海外市場、組織戦略など、士業の未来に必要な多面的な視座を得る場となりました。登壇者の言葉のみならず、ワークショップなどで参加者同士の対話からも新たな学びが生まれていました。実際に事業に活かしている先生方や、プロフェッショナルな提言を聞ける有意義な機会だったと、会場の参加者の方からも喜びと高揚の声が寄せられていました。

Honorsが掲げる「士業の知恵を集め、日本の社会をリードしていく」。そのビジョンが、確実に形になっていくのではないかと思わされる一日でした。

夜の懇親会では、顔を輝かせながら語り合うメンバーの姿がありました。
来年、さらに多くの先生方がこの場で出会い、学び、共創する未来が楽しみです。

(記事:後藤久美子)