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士業事務所の未払い残業代リスクを回避する正しい計算方法と対策
士業事務所の未払い残業代リスクを回避する正しい計算方法と対策
税理士や弁護士、公認会計士といった士業事務所において、労働時間の管理は長年の課題となっています。専門性が高く、個人の裁量に任される業務が多いことから「残業代という概念が希薄」になりがちな業界ですが、近年は労働基準監督署の調査や元職員による未払い請求のリスクが急増しています。本記事では、社会保険労務士法人HONORSの知見を活かし、士業特有の事情を踏まえた未払い残業代の計算方法と、法的リスクを最小限に抑えるための具体的な対策を解説します。
目次
士業特有の労働時間管理と残業代計算の重要性
士業の現場では、資格保有者が自分の判断で仕事を進めるスタイルが一般的です。そのため、経営者側も「プロなのだから残業代という考え方はそぐわない」と考えがちですが、日本の労働基準法において、資格の有無と残業代支払いの義務は切り離して考えなければなりません。適切な計算を怠り、未払い状態を放置することは、数年分の遡及支払いや付加金の発生、さらには事務所の社会的信用失墜を招く致命的なリスクとなります。
未払い残業代が発生しやすい士業事務所の共通点
多くの士業事務所をサポートしてきたHONORSの経験上、労働トラブルを抱える事務所にはいくつかの共通したパターンが存在します。特に制度の解釈ミスによる「隠れ未払い」は非常に危険です。
「専門業務型裁量労働制」の誤った解釈
公認会計士や税理士、弁護士などの業務は、厚生労働省が指定する「専門業務型裁量労働制」の対象に含まれています。しかし、この制度を導入するには、労使協定の締結や所轄労働基準監督署長への届出が必要です。これらの手続きを怠り、単に「裁量で動いているから」という理由だけで残業代を支払わないのは、明らかな法律違反となります。
「管理監督者」の範囲が不適切
事務所の支店長や部門長を「管理職」として扱い、残業代を支給していないケースも目立ちます。法的な「管理監督者」に該当するためには、経営者と一体的な立場にあり、出退勤の自由があり、相応の待遇を受けている必要があります。肩書きだけで判断している場合、裁判所では管理監督者性が否定され、多額の未払い残業代が発生する可能性が極めて高いです。
固定残業代(みなし残業)の運用ミス
「月給に〇万円の残業代を含む」とする固定残業代制を採用している事務所は多いですが、その金額が何時間分の残業に相当するのか、超過分を別途支払う旨が契約書に明記されているか、といった要件が不十分な例が散見されます。要件を満たさない固定残業代は、基本給の一部とみなされ、それをベースに計算し直した膨大な残業代を請求される要因となります。
未払い残業代の基本的な計算式
士業事務所において、自らの事務所が抱える潜在的なリスクを把握するためには、正しい計算式を知っておく必要があります。基本的な考え方は一般企業と同じですが、士業ならではの諸手当の扱いがポイントになります。
残業代を算出する基本ステップ
残業代は、以下の数式で算出します。
「1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 残業時間」
法定時間外労働であれば割増率は1.25倍以上、深夜労働(22時〜5時)が重なればさらに0.25倍が加算されます。士業事務所の場合、繁忙期の終電近くまでの勤務や、土日の休日出勤が常態化していると、この「割増率」の影響が非常に大きくなります。
士業で注意すべき「基礎賃金」の範囲
計算の基礎となる賃金には、基本給だけでなく、資格手当や役職手当も含まれます。例えば、税理士科目合格者への手当や、登録費用の補助としての手当なども、名称に関わらず実質的に労働の対価であれば算入が必要です。これらを除外して計算していると、本来支払うべき額よりも過小な計算となり、未払いが発生する原因となります。
訴訟リスクを最小限に抑えるための3つの対策
一度発生した未払い残業代の請求を覆すのは困難です。重要なのは、トラブルが起きる前に「守り」の労務管理を構築することです。
労働時間の客観的な把握
自己申告制ではなく、PCのログ記録やICカードによる打刻など、客観的な記録を残す仕組みを導入してください。士業の先生方は「仕事が終わらなければ自分の責任で残っているだけだ」とおっしゃることもありますが、事務所内に留まっている以上、特段の事情がない限りは労働時間とみなされるのが現在の法解釈の主流です。
就業規則と賃金規定の整備
固定残業代制や変形労働時間制を採用する場合、その根拠となる就業規則が最新の法改正に対応しているか確認が必要です。特に「残業代は支払わない」といった公序良俗に反する規定は無効となるだけでなく、悪質と判断される要因になります。HONORSでは、士業事務所の業務実態に即した規定の作成を推奨しています。
専門家による定期的な労務診断
法律の専門家である士業だからこそ、自事務所の労務管理が疎かになりがちです。社会保険労務士などの外部専門家による監査(労務診断)を定期的に受けることで、潜在的な計算ミスや法適合性の問題を早期に発見できます。これは単なるコストではなく、将来の莫大な賠償請求を回避するための保険といえます。
まとめ
士業事務所における未払い残業代の問題は、ひとたび表面化すれば経営を揺るがす大きな問題へと発展します。「うちは昔からこのやり方だから」「職員も納得しているから」という理屈は、法的紛争の場では通用しません。正しい計算方法に基づいた適正な賃金支払いは、優秀な人材の定着や事務所の成長にも直結します。手遅れになる前に、現在の労務管理体制を見直すことが重要です。
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