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士業が教える固定残業代制度の注意点|違法とみなされないための要件と対策を解説

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士業が教える固定残業代制度の注意点|違法とみなされないための要件と対策を解説

「固定残業代を導入しているが、実は違法状態になっていないか不安だ」「求人票の記載内容で労働基準監督署から指摘を受けたくない」と考える経営者や人事担当者の方は少なくありません。固定残業代(みなし残業代)制度は、適切に運用すれば事務負担の軽減や生産性向上に寄与しますが、一歩間違えると未払い残業代の請求や訴訟リスクを抱えることになります。本記事では、社会保険労務士などの士業の視点から、固定残業代が違法とされるケースや、適法に運用するための必須要件を詳しく解説します。

目次

固定残業代制度とは?士業が教える基本構造

固定残業代制度とは、実際の残業時間の長さにかかわらず、あらかじめ決められた一定額の残業手当を毎月支払う仕組みです。法律用語では「定額残業代制」とも呼ばれます。この制度の本来の目的は、毎月の給与計算事務の効率化や、従業員の効率的な働き方を促すことにあります。

しかし、中には「残業代を定額にすれば、どれだけ残業させても追加費用が発生しない」と誤解しているケースが見受けられます。これは大きな間違いです。固定残業代はあくまで「一定時間分を先払いしている」に過ぎず、労働基準法の原則を免れるものではありません。Honorsグループが提供する労務コンサルティングにおいても、この「先払いの概念」を正しく理解していただくことから始めています。

固定残業代が違法と判断される主な要因

裁判例や行政指導において、固定残業代が「無効(違法)」と判断されるケースには共通のパターンがあります。特に士業が監査に入る際に厳しくチェックするポイントを確認しましょう。

基本給と固定残業代の区別が曖昧なケース

もっとも多い違法パターンは、基本給の中に固定残業代が含まれていると主張しながら、その内訳が明確でないケースです。例えば、給与明細に「月給30万円(固定残業代含む)」とだけ記載されており、いくらが基本給で、いくらが何時間分の残業代なのかが判別できない状態です。この場合、裁判所からは「固定残業代として機能していない」とみなされ、30万円全体を基本給として計算し直した上で、別途全ての残業代の支払いを命じられるリスクがあります。

想定時間を超えた分の差額が支払われていないケース

固定残業代制度において、あらかじめ設定した時間(例:30時間分)を超えて残業を行った場合、会社はその超過分を別途支払う義務があります。この差額精算を行わない運用は、明確な労働基準法違反です。「固定で払っているのだから、何時間働いても同じ」という運用は通用しません。毎月の勤怠管理を正確に行い、超過分が発生していないか確認するプロセスが不可欠です。

最低賃金を下回っているケース

基本給から固定残業代を差し引いた金額が、各都道府県の定める最低賃金を満たしていないケースも散見されます。特に最低賃金が改定される毎年10月前後は注意が必要です。固定残業代を含めた総額では最低賃金を超えていても、基本給単価で算出した際に下回っていれば違法となります。

適法な運用に欠かせない「5つの要件」

トラブルを未然に防ぐためには、法的に有効な要件を満たす必要があります。ここでは特に重要な項目を整理します。

雇用契約書や就業規則への明記

固定残業代制度を導入するには、個別の雇用契約書や就業規則に根拠となる規定を設ける必要があります。単に慣習として支払っているだけでは、法的根拠として認められません。規定には「何の手当が」「何時間分の時間外労働に対するものか」を明文で記載しておくべきです。

金額と対象時間の具体的な提示

求人広告や労働条件通知書において、以下の内容をセットで明示することが義務付けられています。これらが欠けていると、ハローワークからの指導や求職者とのトラブルに発展します。

  • 固定残業代の金額(例:50,000円)
  • その金額に該当する労働時間数(例:30時間分)
  • 固定残業代を除いた基本給の額
  • 時間を超過した場合には追加で支給する旨の明記

違法と判断された場合のリスクと企業への影響

もし固定残業代制度が違法(無効)と判断された場合、企業が被るダメージは計り知れません。まず、過去に遡って未払い残業代を請求される可能性があります。この際、前述の通り「手当を含んだ総額」を基礎賃金として計算されるため、想定の2倍近い金額になることも珍しくありません。

さらに、付加金(同額のペナルティ)の支払いを命じられることや、遅延損害金が発生することもあります。何より、労働局の企業名公表やSNSでの拡散による「ブラック企業」というレッテル貼りは、採用活動において致命的な悪影響を及ぼします。士業のサポートを受けながら、早期にコンプライアンス体制を整えることが、結果として企業の利益を守ることにつながります。

まとめ

固定残業代制度は、正しく運用すれば企業と従業員の双方にメリットのある制度ですが、形式的な導入では違法のリスクを免れません。明確な区分、差額の支給、そして就業規則への適切な記載という基本を徹底することが重要です。現在の給与体系に不安がある場合や、適正な運用ができているか確認したい場合は、専門的な知見を持つ士業へ相談することをお勧めします。Honorsグループでは、企業のフェーズに合わせた最適な労務管理の構築を支援しています。

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