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【徹底検証】士業の年収は1000万円に届くのか?8士業・10士業の平均年収ランキングと現実を解説

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「士業」と聞くと、多くの方が高収入のイメージを持つのではないでしょうか。弁護士、税理士、司法書士といった専門家たちは、難関の国家資格を突破し、法律や制度に関する高度な専門知識を武器に活躍しています。では、実際のところ士業の年収はどの程度なのでしょうか。そして、年収1000万円という大台に届くことは現実的なのでしょうか。

本記事では、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」などの公的データを基に、8士業・10士業の平均年収をランキング形式で徹底分析します。さらに、各士業の具体的な業務内容、資格取得の難易度、年収アップの方法、そして将来性まで、士業を目指す方や士業として活躍中の方に役立つ情報を網羅的にお届けします。

目次

士業とは?8士業・10士業の定義と違いを解説

士業について詳しく解説する前に、まずは基本的な定義から確認していきましょう。士業の世界には独特の分類や制度があり、これを理解することで各資格の位置づけや価値が明確になります。

士業(サムライ業)の基本的な定義

士業(しぎょう)とは、弁護士や税理士、司法書士など、名称の末尾に「士」がつく専門職業の総称です。古くから「武士」「学士」などに使われてきた「士」という漢字は、知識人や専門職を表す意味を持ち、現代においては法律・会計・不動産・労務など各分野で専門的な業務を担う職業に使われています。そのため、士業は「サムライ業」とも呼ばれることがあります。

士業の最大の特徴は、多くが国家資格であり、資格取得者にしか認められない「独占業務」を持つ点です。たとえば、税務申告書の作成は税理士のみが行える独占業務であり、他の資格者や無資格者が業として行うことは法律で禁止されています。この独占業務があることで、士業は一定の需要が保証され、専門性の高いサービスを提供することができるのです。

士業として活動するためには、原則として国家試験に合格し、各士業の登録要件を満たした上で、所定の機関に登録する必要があります。この厳格な参入障壁があるからこそ、士業は社会的な信頼性が高く、企業や個人の重要な意思決定に関わることができるのです。

8士業とは:職務上請求権を持つ8つの士業

士業の中でも特に「8士業」と呼ばれる分類があります。8士業とは、住民基本台帳法に基づき、業務上必要な場合に住民票や戸籍謄本などの公的書類を請求する権限(職務上請求権)が認められている8種類の士業を指します。

8士業に含まれるのは以下の8つです。

1. 弁護士:法律に関するあらゆる問題を扱う法務の専門家。民事事件・刑事事件の訴訟代理、法律相談、契約書作成などを行います。

2. 司法書士:不動産登記や商業登記の申請代理、裁判所提出書類の作成などを行う登記の専門家。認定司法書士は簡易裁判所での訴訟代理も可能です。

3. 弁理士:特許、商標、意匠などの知的財産権に関する出願手続きや権利保護を行う専門家。企業の技術やブランドを守る重要な役割を担います。

4. 税理士:税金に関する相談、申告書の作成、税務代理などを行う税務の専門家。企業の経営相談や会計業務も担当することが多くあります。

5. 社会保険労務士:労働社会保険に関する手続きの代行、労務管理の相談、年金に関するアドバイスなどを行う労務の専門家です。

6. 行政書士:官公署に提出する許認可申請書類の作成、権利義務に関する書類の作成などを行います。建設業許可や飲食店営業許可など、1万種以上の許認可申請を取り扱います。

7. 土地家屋調査士:不動産の測量や表示に関する登記を専門とし、土地の境界確定や建物の現況測量などを行います。

8. 海事代理士:船舶の登記や登録、海事に関する行政手続きを代行する専門家。港や船舶に関わる独特の分野を専門としています。

これら8士業は、業務上の必要がある場合に限り、本人の委任状がなくても戸籍謄本や住民票を取得できる特別な権限を持っています。この職務上請求権があることで、依頼者の手続きをスムーズに進めることが可能となり、専門家としての機能を十分に発揮できるのです。

10士業とは:8士業に3つの士業を加えた分類

8士業に対して「10士業」という分類も存在します。10士業は、8士業から海事代理士を除いた7つの士業に、「公認会計士」「中小企業診断士」「不動産鑑定士」の3つを加えた10の士業を指します。

追加される3つの士業は以下の通りです。

公認会計士は、企業の財務諸表の監査を行う監査・会計の専門家です。上場企業などが作成する財務諸表が適正であるかを監査し、その信頼性を担保する重要な役割を担っています。監査業務のほか、税務やコンサルティング業務も行うことができます。

中小企業診断士は、中小企業の経営課題を分析し、改善策を提案する経営コンサルタントの国家資格です。経営戦略の立案、財務改善、マーケティング支援など、企業経営全般にわたるアドバイスを行います。

不動産鑑定士は、土地や建物などの不動産の適正な価格を評価する専門家です。不動産取引や相続税の算定、企業の資産評価など、不動産価値の客観的な評価が必要な場面で活躍します。

10士業は、商工会議所の相談窓口に設置されていることが多く、個人や中小企業と密接に関わる業務を行っています。海事代理士が10士業から外れている理由は、その業務がかなり専門的で対象が限定されているためと考えられています。

士業と一般職との違い

士業と一般的な会社員との最も大きな違いは、「独占業務」の存在と「独立開業」の可能性にあります。

一般的な会社員は、企業に雇用され、その企業の業務に従事します。基本的には会社の指示に従って仕事を行い、収入は給与という形で支払われます。キャリアアップは社内での昇進や転職によって実現することが一般的です。

一方、士業は国家資格を取得することで、その資格に付随する独占業務を行う権限を得ます。この独占業務は、資格を持たない者が業として行うことは法律で禁止されているため、一定の需要が確保されています。また、多くの士業は独立開業が可能であり、自分の事務所を構えて経営者として活動することができます。

収入面でも大きな違いがあります。会社員の収入は基本的に給与として決まっていますが、士業は独立開業した場合、自身の営業努力や専門性の向上によって収入を大幅に増やすことが可能です。逆に、顧客獲得がうまくいかなければ収入が減少するリスクもあります。

また、士業は定年がないことも大きな特徴です。会社員は通常60歳から65歳で定年を迎えますが、士業は体力や意欲が続く限り、何歳になっても仕事を続けることができます。経験を積むほど専門性が高まり、顧客からの信頼も厚くなるため、年齢を重ねてからも活躍できる点は士業の大きな魅力といえるでしょう。

【令和6年版】8士業・10士業の平均年収ランキング

それでは、士業の年収について具体的なデータを見ていきましょう。厚生労働省が発表した「令和6年賃金構造基本統計調査」を基に、8士業・10士業の平均年収をランキング形式でご紹介します。

8士業の平均年収ランキング

令和6年賃金構造基本統計調査によると、8士業の平均年収は以下の順位となっています。なお、年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。

第1位は社会保険労務士・中小企業診断士が含まれる「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」の分類で、平均年収は約947万円となっています。ただし、この分類には士業以外の職業も含まれているため、純粋な士業のみの年収とは言い切れない点に注意が必要です。

第2位は弁護士を含む「法務従事者」の分類で、平均年収は約765万円です。法務従事者には裁判官、検察官、弁護士、弁理士、司法書士、その他の法務従事者が含まれます。

第3位は税理士・公認会計士で、平均年収は約856万円となっています。令和5年の約747万円から大幅に増加しており、会計業界の人材需要の高まりを反映しています。

第4位は司法書士で、平均年収は約970万円です。この数字は独立開業している司法書士も含むデータのため、勤務司法書士のみの年収はこれより低い傾向にあります。

第5位は行政書士で、平均年収は約551万円です。行政書士は兼業している方が多く、純粋な行政書士業務のみの収入はこれより低くなる可能性があります。

第6位は土地家屋調査士で、平均年収は約500万円前後とされています。不動産測量という専門性の高い業務を行いますが、案件数によって収入が変動しやすい特徴があります。

第7位以降の弁理士は平均年収約700~760万円、海事代理士については正確な統計データが少なく、専門性の高さから一概に平均を示すことが難しい状況です。

10士業の平均年収ランキング

10士業として追加される3つの士業の年収も含めて見ていきましょう。

公認会計士は税理士と同じ統計分類に含まれており、平均年収は約856万円です。ただし、大手監査法人に勤務する公認会計士は、5年程度のキャリアで年収1000万円を超えることも珍しくありません。

中小企業診断士は「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」に分類され、平均年収は約947万円となっています。この数字は証券アナリストやファンドマネージャーなど、他の高年収職業も含んだ数値であることに留意が必要です。

不動産鑑定士の平均年収は約700万円とされています。景気の影響を受けやすい職業ではありますが、専門的な分析力を持つことで安定した収入を得ることが可能です。

10士業全体の平均年収ランキングを総合的にまとめると、以下のような順位となります。なお、統計データの取り方によって数値が異なる場合があることをご了承ください。

1位:弁護士・司法書士(約970万円~1,000万円超)、2位:公認会計士・税理士(約856万円)、3位:社会保険労務士・中小企業診断士(約947万円、ただし他職業含む)、4位:弁理士(約700~760万円)、5位:不動産鑑定士(約700万円)、6位:行政書士(約551万円)、7位:土地家屋調査士(約500万円)という順位になります。

年収データの注意点と統計の見方

士業の年収データを見る際には、いくつかの重要な注意点があります。

まず、賃金構造基本統計調査は「雇用されている労働者」を対象としているため、独立開業している士業の収入は含まれていない場合があります。士業の中には独立開業している方の割合が高い職種もあり、その場合は実態と統計データに乖離が生じることがあります。

次に、職業分類の問題があります。賃金構造基本統計調査では、複数の職業が一つの分類にまとめられていることがあります。たとえば、社会保険労務士と中小企業診断士が含まれる「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」には、人事コンサルタント、証券アナリスト、ファンドマネージャー、M&Aマネージャーなども含まれています。これらの職業は一般的に高年収であるため、士業以外の職業が平均年収を押し上げている可能性があります。

また、平均値と中央値の違いも重要です。士業の年収は個人差が非常に大きく、一部の高収入者が平均値を大きく押し上げていることがあります。より実態に近い数字を知りたい場合は、中央値を参考にすることをお勧めします。たとえば、弁護士の場合、平均収入は約2,000万円超とされていますが、中央値は約1,500万円とされており、約500万円の差があります。

さらに、年収データは調査時点や調査機関によって異なることがあります。厚生労働省の賃金構造基本統計調査、各士業団体の独自調査、民間の求人サイトの調査など、それぞれ異なる数値が発表されることがあるため、複数の情報源を比較検討することが重要です。

年収1000万円に最も近い士業はどれか?徹底検証

士業を目指す方の多くが気になるのは、「年収1000万円に届くのか」という点ではないでしょうか。ここでは、統計データを詳しく分析し、年収1000万円に最も近い士業を検証していきます。

賃金構造基本統計調査の職業分類に関する注意点

前述の通り、賃金構造基本統計調査では複数の職業が一つの分類にまとめられています。この点を踏まえて、より正確な士業の年収実態を把握する必要があります。

令和6年賃金構造基本統計調査によると、社会保険労務士と中小企業診断士が属する「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」の平均年収は約947万円で、10士業の中で最も年収1000万円に近いように見えます。しかし、厚生労働省が公開している「職業分類対応表」を確認すると、この分類には人事コンサルタント、証券アナリスト、ファンドマネージャー、M&Aマネージャーなど、一般的に高年収とされる職業が多数含まれています。

これらの職業が平均年収を押し上げている可能性が高いため、社会保険労務士と中小企業診断士の純粋な平均年収は、統計上の数値よりも低い可能性があります。したがって、統計データをそのまま比較するのではなく、各士業団体の調査結果や求人データなども参考にして総合的に判断することが重要です。

実際に年収1000万円を超えている士業の割合

各士業団体の調査や民間の調査結果を総合すると、年収1000万円を超えている割合は士業によって大きく異なります。

弁護士については、日本弁護士連合会の調査によると、年収(所得)の平均は約1,022万円、中央値は約800万円とされています。収入ベースでは中央値が約1,500万円となっており、経費を差し引いた所得として1000万円を超えている弁護士は全体の約30~40%程度と推定されます。ただし、経験年数15年以上のベテラン弁護士になると、年収1000万円超の割合は大幅に上昇します。

税理士については、勤務税理士の場合、経験年数15年以上で平均年収が約856万円を超える水準となり、年収1000万円に達する割合は全体の20~30%程度と考えられます。一方、独立開業税理士の場合、売上高1億円を超える事務所は全体の約10%とされており、事務所経営次第で高収入を得ることが可能です。

司法書士については、日本司法書士会連合会の調査によると、独立開業している司法書士の場合、売上(収入)金額で1000万円以上と回答した方が52%、所得金額で1000万円以上と回答した方が13%となっています。勤務司法書士の場合は年収300万~600万円が最も多い層となっており、年収1000万円超の割合は低くなっています。

公認会計士については、大手監査法人に勤務する場合、入社5年程度で年収1000万円を超えることが一般的とされています。BIG4と呼ばれる大手監査法人では、マネージャー以上の役職になると年収1200万~1500万円程度となり、パートナーになると数千万円に達することもあります。

独立開業と勤務の年収格差

士業の年収を考える上で、独立開業と勤務(雇用)の違いは非常に重要な要素です。同じ士業でも、働き方によって年収は大きく異なります。

一般的に、勤務士業の年収は安定していますが、上限がある程度決まっています。大手事務所や企業に勤務する場合でも、年収の上限は1500万~2000万円程度となることが多く、それ以上の収入を得るのは難しい傾向があります。ただし、勤務士業のメリットとして、毎月安定した給与を得られること、社会保険が完備されていること、営業活動を行う必要がないことなどが挙げられます。

一方、独立開業した場合は、収入の上限がありません。事業が軌道に乗れば年収3000万円、5000万円、さらには1億円以上を稼ぐことも理論上は可能です。実際に、成功した弁護士や税理士の中には、年収数億円を得ている方もいます。しかし、独立開業には事業リスクが伴い、顧客を獲得できなければ収入がゼロになることもあり得ます。

士業別に見ると、独立開業の割合が高い士業ほど年収格差が大きくなる傾向があります。たとえば、弁護士は約8割が独立開業または経営者として活動しており、年収の格差は非常に大きくなっています。年収200万円未満の弁護士がいる一方で、年収1億円を超える弁護士も存在するのです。

税理士や司法書士も同様に独立開業の割合が高く、年収格差が大きい傾向があります。一方、公認会計士は監査法人に勤務する割合が高いため、年収の分布は比較的均一となっています。

弁護士の年収を徹底解剖:士業の最高峰の収入実態

士業の中でも最難関とされる弁護士。その年収実態について、詳しく見ていきましょう。弁護士は法律の専門家として、民事事件から刑事事件まで幅広い法律問題を取り扱い、社会的にも高い地位を確立しています。

弁護士の平均年収と中央値

日本弁護士連合会が10年ごとに実施している「近年の弁護士の活動実態について」の調査によると、弁護士の収入についての中央値は約1,500万円、平均値(5%調整平均)は約2,082万円となっています。一方、所得(収入から経費を差し引いた額)については、中央値が約800万円、平均値(5%調整平均)が約1,022万円という結果が出ています。

この収入と所得の大きな差から、弁護士が事業を運営するにあたって相当の経費がかかっていることがわかります。事務所の賃料、スタッフの人件費、書籍や研修費、交通費など、弁護士業務を行うためには様々な経費が必要となります。

厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)によると、弁護士の平均年収は約765万円とされていますが、これは雇用されている弁護士を対象とした数字であり、独立開業している弁護士の収入は含まれていません。弁護士全体の実態を把握するには、日弁連の調査結果を参考にする方が適切といえるでしょう。

2006年に実施された調査では、弁護士の年間収入の平均は約3,620万円、所得の平均は約1,748万円でした。その後、弁護士数の増加などの影響で年収は減少傾向にあり、2018年の調査では年間収入の平均が約2,143万円、所得の平均が約959万円まで減少しています。とはいえ、一般的なサラリーマンと比較すると依然として高い水準にあることは間違いありません。

経験年数別の弁護士年収の推移

弁護士の年収は、経験年数によって大きく変動します。日弁連の調査によると、経験年数別の収入・所得の傾向は以下のようになっています。

経験年数5年未満(司法修習70期以降)の弁護士の平均所得は約351万円で、平均収入は約575万円となっています。まだキャリアの初期段階であり、顧客基盤を構築している最中のため、収入は比較的低い水準にあります。

経験年数5年以上になると、年収は大幅に増加します。特に経験年数15年から25年の弁護士は、平均収入が2,500万円から3,700万円に達し、所得も1,000万円を大きく超える傾向にあります。この時期は専門性が確立され、固定客も増え、収入が最も高くなる時期といえます。

経験年数20年以上25年未満の弁護士では、平均収入が約3,763万円に達し、これがキャリアにおける収入のピークとなる傾向があります。その後、経験年数30年以上になると、収入は若干減少する傾向が見られますが、これは高齢になって業務量を調整する弁護士が増えるためと考えられます。

大手法律事務所と中小事務所の年収差

弁護士の年収は、所属する法律事務所の規模によっても大きく異なります。いわゆる「五大法律事務所」(四大法律事務所)と呼ばれる大手事務所と、中小規模の事務所では、年収に大きな差があります。

五大法律事務所(西村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、TMI総合法律事務所)に入所した場合、入社時から年収1,000万円を超えることが一般的です。これらの事務所は大企業向けの企業法務を主に扱い、M&A、国際取引、ファイナンスなど高度な案件を手がけるため、報酬も高額になります。

大手事務所では、パートナー弁護士になると年収は3,000万円以上、場合によっては1億円を超えることもあるとされています。ただし、大手事務所は業務量が非常に多く、長時間労働になりがちであることも事実です。

一方、中小規模の法律事務所では、入社時の年収は300万~500万円程度からスタートすることが多く、最高でも1,000万円台にとどまることが一般的です。ただし、業務量は大手事務所ほど多くなく、ワークライフバランスを取りやすいというメリットもあります。

地域別に見ると、東京の大手事務所が最も年収が高く、次いで大阪、名古屋、福岡などの大都市圏の事務所が続きます。地方の小規模事務所では、年収500万~700万円程度が一般的とされています。

企業内弁護士(インハウスローヤー)の年収

近年、法律事務所ではなく企業に所属する「企業内弁護士(インハウスローヤー)」という働き方が注目を集めています。日本組織内弁護士協会の調査によると、インハウスローヤーの年収は750万~1,250万円ほどが半数を占めています。

インハウスローヤーは、企業の法務部門に所属し、その企業の法的問題を専門的に担当します。契約書のレビュー、コンプライアンス対応、訴訟対応、M&Aの法務支援など、幅広い業務を行います。

インハウスローヤーのメリットとしては、安定した収入が得られること、残業が法律事務所ほど多くないこと、一つの企業の業務に深く関わることができることなどが挙げられます。一方、デメリットとしては、年収の上限が法律事務所ほど高くないこと、扱える案件が所属企業の業務に限定されることなどがあります。

大手企業の法務部門では、部長クラスになると年収1,500万~2,000万円に達することもあり、企業内弁護士としても高収入を得ることは可能です。

弁護士の将来性と年収動向

弁護士の年収が減少傾向にある主な原因として、司法制度改革による弁護士数の増加が挙げられます。1999年から始まった司法制度改革により、弁護士の人数は大幅に増加しました。2000年頃に約1万7,000人だった弁護士数は、2025年現在では約4万7,000人にまで増加しています。

弁護士数が増加した一方で、民事事件や刑事事件の件数は大幅に伸びているわけではありません。結果として、弁護士1人あたりの案件数が減少し、競争が激化している状況です。

しかし、弁護士の将来性が暗いわけではありません。企業法務、知的財産、国際取引、M&A、コンプライアンスなど、弁護士の活躍の場は広がっています。特に、これらの専門分野に強みを持つ弁護士は、高い報酬を得ることができます。

また、弁護士は「定年がない」という大きなメリットがあります。経験を積むほど専門性が高まり、顧客からの信頼も厚くなるため、年齢を重ねても活躍し続けることができます。生涯を通じたキャリア形成を考えると、弁護士は依然として魅力的な職業といえるでしょう。

税理士・公認会計士の年収分析:会計のプロフェッショナルたち

会計・税務分野のスペシャリストである税理士と公認会計士。両者は似た分野で活躍していますが、業務内容や年収構造には違いがあります。詳しく見ていきましょう。

税理士の平均年収と収入構造

厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、税理士事務所に勤務する所属(勤務)税理士の平均年収は約856万円と推定されています。これは令和5年の約747万円から約14.5%の大幅な増加となっており、会計業界全体の人材需要の高まりを反映しています。

税理士の年収は経験年数に比例して上がる傾向があります。経験年数5年未満の税理士は比較的低い年収からスタートしますが、経験年数15年以上になると平均年収約856万円を超える水準に達します。

税理士の収入源は主に、顧問契約による月額顧問料、確定申告や年末調整などの季節業務の報酬、相続税申告や事業承継などのスポット案件の報酬に分けられます。顧問契約は毎月安定した収入をもたらし、季節業務やスポット案件は追加収入となります。

事務所の規模によっても年収は異なります。従業員数10名以上の税理士事務所に勤務する税理士の方が、小規模事務所に勤務する税理士よりも年収が高い傾向があります。

公認会計士の平均年収と監査法人でのキャリア

公認会計士の平均年収は、税理士と同じ統計分類に含まれるため約856万円とされていますが、監査法人に勤務する公認会計士の実際の年収はこれよりも高い傾向があります。

BIG4と呼ばれる四大監査法人(有限責任あずさ監査法人、EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwCあらた有限責任監査法人)に入社した場合、入社時の年収は500万~600万円程度ですが、5年程度のキャリアで年収1,000万円を超えることが一般的です。

監査法人でのキャリアパスは、スタッフ → シニアスタッフ → マネージャー → シニアマネージャー → パートナーという順序で昇進していきます。マネージャー以上になると年収1,200万~1,500万円程度、パートナーになると2,000万円以上、場合によっては5,000万円を超えることもあります。

公認会計士の特徴として、監査業務という独占業務を持つことが挙げられます。上場企業は外部監査を受けることが義務付けられており、この監査業務は公認会計士にしか行うことができません。この独占業務があることで、公認会計士の需要は安定しています。

税理士と公認会計士の年収比較

税理士と公認会計士はどちらも会計・税務分野の専門家ですが、その収入構造には違いがあります。

税理士は独立開業の割合が高く、収入の格差が大きくなる傾向があります。成功した独立開業税理士は年収数千万円を得ることも可能ですが、顧客獲得がうまくいかない場合は年収が低くなるリスクもあります。また、税理士の約7割を占める開業税理士については、税理士事務所の平均売上高が約5,000万円、売上高1億円を超える事務所が全体の約1割というデータもあります。

一方、公認会計士は監査法人に勤務する割合が高いため、収入は比較的安定しています。監査法人での勤務を続ける限り、一定の年収が保証されます。ただし、監査法人は業務量が多く、繁忙期には深夜まで残業することも珍しくありません。

キャリアの選択肢としては、税理士は独立開業を目指す方に向いており、公認会計士は組織に所属して安定したキャリアを築きたい方に向いているといえるでしょう。ただし、公認会計士も税理士登録をすることができるため、将来的に独立開業することも可能です。

独立開業税理士の売上と所得

税理士として独立開業した場合の収入事情について、より詳しく見ていきましょう。経済センサスの調査によると、税理士事務所の平均売上高は約4,926万円、スタッフ1名あたりの平均売上高は約936万円となっています。

事務所の規模別に見ると、スタッフ数4名以下の少人数事務所の平均売上高は約2,087万円です。一方、従業員数10名以上の税理士事務所になると、平均売上高が1億円を超えます。

独立開業税理士の所得(売上から経費を差し引いた額)は、事務所の規模や経営効率によって大きく異なります。一般的に、売上の30~50%程度が所得として残ると考えられていますが、人件費や事務所経費の負担によって変動します。

独立開業で成功するためには、専門分野を確立すること、継続的な顧客獲得活動を行うこと、スタッフの育成・管理を適切に行うことなどが重要です。特に、相続税、事業承継、国際税務などの専門分野に強みを持つ税理士は、高単価の案件を獲得しやすい傾向があります。

司法書士の年収実態:登記の専門家の収入事情

不動産登記や商業登記を専門とする司法書士。相続登記の義務化によって需要が高まっている司法書士の年収実態について解説します。

司法書士の平均年収データ

厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)によると、司法書士の平均年収は約765万円~970万円とされています。ただし、この数字は独立開業司法書士と勤務司法書士の両方を含んでおり、実際の収入は働き方によって大きく異なります。

日本司法書士会連合会の「司法書士白書2021年版」によると、事務所に勤務する司法書士の場合、年収300万~600万円未満の方が回答者全体の54%と最も多くなっています。勤務司法書士の多くは、年収300万~400万円台からキャリアをスタートし、経験を積むことで年収500万~600万円台に達することが一般的です。

民間の転職サービスの調査によると、勤務司法書士の平均提示年収は約394万円というデータもあり、年収レンジ別の割合では300万~399万円が約56%、400万~499万円が約36%、500万~599万円が約6%となっています。

勤務司法書士と独立開業司法書士の年収差

司法書士の年収において、勤務と独立開業では大きな差があります。司法書士白書によると、独立開業している司法書士の場合、売上(収入)金額で1,000万円以上と回答した方が52%、所得金額で1,000万円以上と回答した方が13%となっています。

独立開業司法書士は、営業力や経営努力次第で高収入を得ることが可能です。特に、不動産会社や金融機関との強いパイプを持つ司法書士は、安定した案件獲得が可能となり、高い収入を維持することができます。

一方、独立開業にはリスクも伴います。顧客獲得がうまくいかなければ収入が不安定になる可能性があり、中には収入が0円や100万円以下という司法書士も存在します。独立開業を成功させるためには、専門分野の確立、営業活動の継続、他士業との連携構築などが重要です。

勤務司法書士と独立開業司法書士のどちらを選ぶかは、リスク許容度やライフスタイルの希望によって判断する必要があります。安定を重視する方は勤務司法書士として経験を積み、将来的に独立するかどうかを検討することをお勧めします。

相続登記義務化による需要増加の影響

2024年4月から相続登記が義務化されました。これは、相続が発生した場合に、相続人は相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならないという制度です。正当な理由なく申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

この相続登記義務化によって、司法書士への相続登記の依頼が増加することが見込まれています。これまで相続登記を行っていなかった不動産も対象となるため、過去の相続分も含めて大量の登記申請が必要となります。

司法書士にとっては、相続登記義務化は大きなビジネスチャンスです。特に、相続に関する知識を持ち、遺産分割協議の支援や相続税対策のアドバイスまでできる司法書士は、顧客からの信頼を得やすく、継続的な案件獲得につながります。

また、高齢化の進展に伴い、成年後見業務や財産管理業務の需要も増加しています。認定司法書士として簡易裁判所での訴訟代理業務を行うことも可能であり、司法書士の業務範囲は拡大傾向にあります。

社会保険労務士の年収と将来性:労務の専門家

労働・社会保険の専門家である社会保険労務士。働き方改革の推進や労働法制の複雑化により、需要が高まっている社労士の年収実態を解説します。

社会保険労務士の平均年収

社会保険労務士の平均年収については、様々な調査で異なる数字が示されています。厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、社会保険労務士が含まれる「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」の平均年収は約947万円となっていますが、この分類には他の高年収職業も含まれているため、純粋な社労士の年収はこれより低いと考えられます。

厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)によると、社会保険労務士の平均年収は約650万~700万円とされています。この数字は、勤務社労士と独立開業社労士の両方を含んだ平均値です。

社労士の受験者の8割が会社員であり、仕事と両立しながら資格を取得する方が多いことが特徴です。企業内で人事・総務部門に所属しながら社労士資格を取得し、「企業内社労士」として活躍するケースも増えています。

働き方改革と社労士需要の高まり

近年、社会保険労務士の需要が高まっている大きな要因の一つが、働き方改革の推進です。2019年4月から順次施行された働き方改革関連法により、企業は残業時間の上限規制、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金の実現など、様々な対応を求められるようになりました。

これらの労働法制は複雑であり、中小企業にとっては対応が難しい面があります。そのため、労働法の専門家である社会保険労務士に相談・依頼するケースが増えています。

また、ハラスメント対策、メンタルヘルス対策、育児・介護休業制度の整備など、企業が取り組むべき人事労務課題は年々増加しています。これらの課題に対応するためには、社会保険労務士の専門知識が不可欠です。

さらに、助成金の申請代行も社労士の重要な業務です。国や地方自治体には様々な助成金制度がありますが、申請手続きが複雑なため、社労士に依頼する企業が多くあります。助成金の申請が成功すれば、成功報酬として売上を得ることができます。

顧問契約型ビジネスモデルの強み

社会保険労務士の収入構造の特徴として、顧問契約による継続的な収入があります。多くの企業は、労働保険・社会保険の手続き、給与計算、労務相談などを社労士に委託しており、月額顧問料を支払っています。

顧問料の相場は、企業の規模や業務内容によって異なりますが、月額3万~10万円程度が一般的です。顧問契約を継続的に獲得できれば、毎月安定した収入を得ることができます。

たとえば、月額5万円の顧問契約を20社獲得できれば、月額100万円、年間1,200万円の収入となります。さらに、スポット業務(助成金申請、就業規則作成など)を追加で受注することで、収入を上乗せすることができます。

顧問契約型ビジネスモデルの強みは、景気変動に左右されにくいことです。景気が悪化しても、企業は労働保険・社会保険の手続きを行う必要があるため、社労士への依頼を完全に止めることは難しいのです。

行政書士の年収実態:許認可のスペシャリスト

官公署に提出する許認可申請書類の作成を専門とする行政書士。1万種以上の許認可申請を取り扱うことができる行政書士の年収実態について解説します。

行政書士の平均年収と収入分布

厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)によると、行政書士の平均年収は約551万円とされています。ただし、行政書士の年収は個人差が非常に大きく、年収100万円未満の方から年収1,000万円以上の方まで幅広く分布しています。

行政書士の収入分布を見ると、年収300万円未満の方が全体の約50%を占めるという調査結果もあります。一方で、専門分野を確立して成功している行政書士の中には、年収1,000万円以上を稼いでいる方も存在します。

行政書士の年収が低めになる傾向がある理由として、兼業している方が多いことが挙げられます。行政書士の多くは、司法書士、税理士、社労士など他の士業資格と併せて取得し、複数の業務を行っています。また、本業を別に持ちながら副業として行政書士業務を行う方も少なくありません。

兼業行政書士の実態

行政書士は他の士業と兼業していることが非常に多い資格です。その理由としては、行政書士試験の受験資格に制限がなく、比較的取得しやすいことや、行政書士の業務が他士業の業務と関連していることが挙げられます。

たとえば、司法書士と行政書士を兼業することで、会社設立の登記(司法書士業務)と許認可申請(行政書士業務)をワンストップで提供することができます。税理士と行政書士を兼業することで、税務顧問業務に加えて各種許認可申請も受託することができます。

兼業することのメリットは、顧客のニーズに幅広く対応できること、他業務の顧客に対してクロスセルが可能なことなどが挙げられます。一方、複数の資格を維持するための登録費用や研修費用がかかるというデメリットもあります。

行政書士単独で開業している方の年収は、他士業と兼業している方の年収よりも低い傾向があるとされています。行政書士として高収入を得るためには、専門分野を確立するか、他士業との兼業やダブルライセンスを検討することが重要です。

行政書士で高収入を得るための専門特化戦略

行政書士で高収入を得ている方の多くは、特定の専門分野に特化しています。行政書士の業務は1万種類以上ありますが、すべてを手掛けようとするのではなく、特定分野に絞って専門性を高めることが成功の鍵となります。

高収入につながりやすい行政書士の専門分野としては、入管業務(外国人の在留資格申請)があります。グローバル化に伴い、外国人労働者を雇用する企業が増加しており、ビザ申請の需要が高まっています。入管業務に特化した行政書士の中には、年収1,000万円以上を稼いでいる方も少なくありません。

建設業許可申請も高収入につながりやすい分野です。建設業を営むためには許可が必要であり、許可の取得・更新・変届出などの手続きは複雑です。建設業許可に特化した行政書士は、継続的な案件獲得が可能です。

その他にも、産業廃棄物処理業許可、運送業許可、風営許可、相続遺言などの分野で専門性を高めることで、高単価の案件を獲得することができます。

弁理士・不動産鑑定士・中小企業診断士の年収

10士業に含まれる弁理士、不動産鑑定士、中小企業診断士。それぞれ専門性の高い分野で活躍するこれらの士業の年収実態を解説します。

弁理士の年収と知的財産分野の可能性

弁理士は、特許・商標・意匠・実用新案などの産業財産権に関する出願手続きや、知的財産の保護・活用に関するコンサルティングを行う専門家です。弁理士の平均年収は約700万~760万円とされています。

弁理士の収入は、勤務先によって大きく異なります。大手特許事務所に勤務する場合は年収800万~1,000万円程度、企業の知的財産部門に勤務する場合は年収600万~900万円程度が一般的です。独立開業した場合は、案件獲得次第で年収1,000万円以上を稼ぐことも可能です。

弁理士の特徴として、理系出身者に人気が高いことが挙げられます。特許出願には技術的な知識が必要であり、技術系のバックグラウンドを持つ方が有利です。また、弁理士業務は国内にとどまらず、海外の特許庁への出願も扱うため、語学力があると給与面で優遇されることがあります。

知的財産の重要性が高まる中、弁理士の需要は今後も安定して推移すると予想されています。特に、AI・IoT・バイオテクノロジーなどの先端技術分野では、特許戦略の重要性が増しており、これらの分野に強みを持つ弁理士は高い報酬を得ることができます。

不動産鑑定士の年収と市場動向

不動産鑑定士は、土地や建物などの不動産の適正な価格を評価する専門家です。不動産鑑定士の平均年収は約700万円とされています。

不動産鑑定士の主な業務は、不動産の鑑定評価です。不動産取引、相続税の算定、企業の資産評価、公共用地の取得、地価公示など、不動産の価値を客観的に評価する必要がある場面で活躍します。

不動産鑑定士の収入は、景気の影響を受けやすい特徴があります。不動産市場が活発な時期には鑑定評価の依頼が増加し、収入も上昇します。一方、不動産市場が低迷すると、鑑定評価の依頼が減少し、収入も減少する傾向があります。

不動産鑑定士として高収入を得るためには、不動産業界、金融機関、官公庁などとの強いパイプを構築することが重要です。また、証券化対象不動産の鑑定評価など、専門性の高い分野に強みを持つことで、高単価の案件を獲得することができます。

中小企業診断士の年収と経営コンサルティング

中小企業診断士は、中小企業の経営課題を分析し、改善策を提案する経営コンサルタントの国家資格です。中小企業診断士の平均年収については、賃金構造基本統計調査では他の職業と一緒に集計されているため、正確な数字を把握することは難しいですが、一般的には500万~800万円程度とされています。

中小企業診断士の特徴として、企業に所属しながら資格を活かすケースが多いことが挙げられます。経営企画部門、営業部門、財務部門などで働きながら、中小企業診断士の知識を業務に活用している方が多くいます。この場合、年収は所属企業の給与体系に依存します。

独立開業して経営コンサルタントとして活動する場合は、コンサルティング報酬として収入を得ることになります。成功した独立系コンサルタントの中には、年収1,000万円以上を稼いでいる方もいます。ただし、コンサルティング業務は営業力や実績が重要であり、顧客獲得がうまくいかなければ収入が不安定になるリスクもあります。

中小企業診断士の将来性については、中小企業支援策の拡充や事業承継問題の深刻化などを背景に、需要は堅調に推移すると予想されています。特に、デジタル化支援、事業承継支援、補助金申請支援などの分野では、中小企業診断士の活躍の場が広がっています。

土地家屋調査士・海事代理士の年収

8士業に含まれる土地家屋調査士と海事代理士。専門性の高いこれらの士業の年収実態について解説します。

土地家屋調査士の年収と業務特性

土地家屋調査士は、不動産の測量や表示に関する登記を専門とする国家資格です。土地の境界確定、建物の現況測量、分筆登記、合筆登記、建物表題登記などの業務を行います。土地家屋調査士の平均年収は約500万円前後とされています。

土地家屋調査士の業務は、現地での測量作業と事務所での書類作成作業の両方を含みます。屋外での作業が多いため、体力的な負担がある一方、現場で実際に測量を行う達成感があります。

土地家屋調査士の収入は、案件数によって大きく変動します。不動産取引が活発な時期には測量・登記の依頼が増加し、収入も上昇します。また、土地の境界紛争を解決するための筆界特定業務も、土地家屋調査士の重要な収入源となっています。

土地家屋調査士として高収入を得るためには、不動産会社、建設会社、金融機関などとの関係構築が重要です。また、GPS測量やドローン測量など、最新技術を活用した測量サービスを提供することで、競争力を高めることができます。

海事代理士の年収とニッチ市場

海事代理士は、船舶の登記・登録、海事に関する行政手続きを代行する専門家です。8士業の中では最もニッチな分野であり、海運業界や造船業界に特化した専門家です。

海事代理士の年収については、統計データが少なく、正確な平均年収を把握することは難しい状況です。海事代理士の登録者数も他の士業と比較して少なく、専門性の高さから一般的な傾向を示すことが困難です。

海事代理士単独で生計を立てている方は少なく、多くの場合は司法書士や行政書士との兼業で業務を行っています。港湾都市(東京、横浜、神戸、大阪など)に事務所を構え、船舶関連の手続きを専門的に扱うケースが一般的です。

海事代理士として成功するためには、海運会社、造船会社、船主などとの強い関係構築が不可欠です。独立開業して10年程度のベテランになり、一定の顧客を獲得できるようになると、年収1,000万円以上を得ることも可能とされています。

士業の年収を上げる5つの方法

士業として活躍している方、またはこれから士業を目指す方にとって、年収を上げることは大きな関心事でしょう。ここでは、士業の年収を上げるための具体的な方法を5つご紹介します。

専門分野の確立と差別化

士業の年収を上げる最も効果的な方法の一つが、専門分野を確立して差別化を図ることです。「何でもできます」という汎用型の士業よりも、「この分野なら誰にも負けません」という専門特化型の士業の方が、高単価の案件を獲得しやすい傾向があります。

専門分野を選ぶ際のポイントは、需要がある分野であること、自分の強みや経験を活かせる分野であること、競合が少ない分野であることです。たとえば、弁護士であれば、一般的な離婚案件よりも、国際離婚や渉外家事事件に特化する方が高単価を設定しやすくなります。

専門分野を確立したら、その分野での専門性をアピールすることが重要です。専門書の執筆、セミナー講師、メディア出演、専門サイトの運営など、様々な方法で専門性を発信することで、その分野で悩んでいる顧客からの問い合わせを増やすことができます。

ダブルライセンスの取得

複数の士業資格を取得するダブルライセンスは、年収アップに効果的な戦略です。複数の資格を持つことで、顧客のニーズにワンストップで対応できるようになり、サービスの付加価値を高めることができます。

相性の良いダブルライセンスの組み合わせとしては、税理士と行政書士(会社設立から税務顧問まで一貫対応)、司法書士と行政書士(登記と許認可を一括対応)、社労士と行政書士(外国人雇用と入管手続きを一括対応)などがあります。

ダブルライセンスのメリットは、顧客からの信頼が高まること、クロスセルが可能になること、他の士業への紹介案件が増えることなどが挙げられます。一方、複数の資格を維持するための登録費用や研修費用がかかること、すべての分野の最新情報をキャッチアップする必要があることなどのデメリットもあります。

士業ネットワークの構築と連携

士業の年収を上げるためには、他の士業とのネットワークを構築し、連携を深めることが重要です。一人の顧客が抱える問題は、一つの士業だけでは解決できないことが多くあります。複数の士業が連携することで、顧客に総合的なサービスを提供することができます。

士業ネットワークを通じて、自分の専門外の案件を他の士業に紹介し、逆に他の士業から自分の専門分野の案件を紹介してもらうことができます。この紹介案件は、信頼できる専門家からの紹介であるため、成約率が高く、良質な顧客獲得につながります。

士業ネットワークを構築する方法としては、士業交流会への参加、勉強会の開催、士業向けコミュニティへの参加などがあります。全国に展開している士業連携コミュニティ「Honors」のような組織に参加することで、全国の信頼できる士業とのネットワークを構築することができます。

Honorsは、税理士、弁護士、司法書士、社会保険労務士、行政書士など約400名の士業メンバーが参加する士業のビジネスコミュニティです。定期的な勉強会や交流会を通じて、士業同士の連携を深め、顧客への総合的なサービス提供を実現しています。

デジタル化・DX対応による効率化

士業の業務効率を上げることで、同じ時間でより多くの案件をこなすことができ、結果として年収アップにつながります。近年は、士業向けのクラウドサービスや業務支援システムが充実しており、これらを活用することで大幅な効率化が可能です。

たとえば、クラウド会計ソフトを活用することで、記帳業務の効率化が図れます。電子申告システムを活用することで、申告書の作成・提出が効率化されます。顧客管理システム(CRM)を活用することで、顧客情報の管理や営業活動の効率化が図れます。

また、ウェブマーケティングを活用することで、効率的に顧客獲得を行うことができます。ホームページの充実、SEO対策、SNSの活用、オンライン広告などを通じて、見込み顧客からの問い合わせを増やすことができます。

デジタル化への対応は、若い世代の士業にとっては当然のことかもしれませんが、ベテラン世代の士業にとっては苦手意識を持つ方もいるかもしれません。しかし、デジタル化への対応は今後ますます重要になるため、積極的に学習・導入することをお勧めします。

独立開業と規模拡大

士業として年収を大幅に上げるためには、独立開業して事務所経営者になることが有効な選択肢の一つです。勤務士業の場合、年収の上限は所属事務所の給与体系に制限されますが、独立開業すれば収入の上限はありません。

独立開業後に年収を上げるためには、顧客数を増やすこと、単価を上げること、スタッフを雇用して規模を拡大することなどの方法があります。特に、スタッフを雇用して業務を分担することで、自分自身はより高度な業務に集中でき、事務所全体としての売上を拡大することができます。

ただし、独立開業にはリスクも伴います。顧客獲得がうまくいかなければ収入が不安定になる可能性があり、事務所経営には資金繰りや人材管理などの課題もあります。独立開業を検討する際は、十分な準備と計画を行った上で、慎重に判断することが重要です。

士業の資格取得難易度ランキング

士業を目指す方にとって、資格取得の難易度は重要な関心事でしょう。ここでは、8士業・10士業の資格取得難易度をランキング形式で紹介します。

合格率から見る難易度比較

各士業試験の例年の合格率を比較すると、以下のような順位となります。合格率が低いほど難易度が高いと考えられます。

最難関とされるのが司法書士試験で、合格率は例年4~5%程度です。出題範囲が広く、択一式と記述式の両方で高い正答率が求められるため、非常に難易度が高い試験です。

次いで難関とされるのが不動産鑑定士試験で、合格率は5~6%程度です。短答式試験と論文式試験の両方に合格する必要があり、合格までに3年以上の学習期間を要することもあります。

弁理士試験の合格率は6~9%程度、社会保険労務士試験の合格率は6~7%程度、公認会計士試験の合格率は7~11%程度となっています。これらはいずれも難関資格として知られています。

土地家屋調査士試験の合格率は8~10%程度、行政書士試験の合格率は10~15%程度です。行政書士試験は受験資格がなく誰でも受験できるため、受験者数が多い特徴があります。

税理士試験は科目合格制を採用しており、11科目のうち5科目に合格する必要があります。科目ごとの合格率は15~20%程度ですが、5科目すべてに合格するまでに数年かかることが一般的です。

司法試験(弁護士になるための試験)は、合格率30~40%程度と他の士業試験と比較して高いですが、そもそも受験するためには法科大学院を修了するか、予備試験に合格する必要があります。予備試験の合格率は約4%と非常に低く、実質的な難易度は極めて高いと言えます。

必要勉強時間から見る難易度比較

合格に必要な勉強時間の目安を見ると、難易度の傾向がより明確になります。

司法試験(弁護士資格)の合格には3,000~5,000時間の勉強が必要とされています。法科大学院での学習期間を含めると、弁護士になるまでには最短でも6年程度かかります。

司法書士試験の合格には3,000時間以上の勉強が必要とされています。1日5時間の勉強を続けても、合格までに2年程度かかる計算です。

公認会計士試験の合格には2,500~3,500時間の勉強が必要とされています。多くの受験生は専門学校に通いながら、1~3年程度の学習期間を経て合格を目指します。

税理士試験の合格には2,500~5,000時間の勉強が必要とされています。科目合格制のため、働きながら長期間かけて合格を目指す方も多くいます。

弁理士試験の合格には2,000~3,000時間の勉強が必要とされています。理系のバックグラウンドを持つ方は技術分野の学習が軽減されるため、有利になります。

社会保険労務士試験の合格には800~1,000時間の勉強が必要とされています。出題範囲は広いですが、働きながら資格取得を目指す方が多い資格です。

行政書士試験の合格には600~800時間の勉強が必要とされています。独学でも合格可能な資格として知られており、法律系資格の入門として取得する方も多くいます。

年収と難易度の相関関係

一般的に、資格取得の難易度が高い士業ほど、平均年収も高い傾向があります。これは、難関資格を突破した人材は希少性が高く、専門性も高いためです。

弁護士、公認会計士、司法書士などの最難関資格は、平均年収も700万円以上と高い水準にあります。一方、行政書士のように比較的取得しやすい資格は、平均年収も500万円台にとどまる傾向があります。

ただし、年収と難易度は完全に比例するわけではありません。たとえば、社会保険労務士は司法書士ほど難易度は高くありませんが、働き方改革の推進や人事労務の専門性の高まりにより、需要が増加しています。

また、同じ士業でも、専門分野の選択や営業努力によって年収は大きく変わります。難関資格を取得しても、その後のキャリア構築次第で年収は大きく異なることを忘れてはいけません。

士業の将来性:AI時代に生き残る士業とは

AI(人工知能)技術の進歩により、士業の業務の一部が自動化される可能性が指摘されています。士業の将来性について、AI時代を見据えた分析を行います。

AI・自動化の影響を受けやすい業務

士業の業務の中で、AI・自動化の影響を受けやすいのは、定型的・反復的な業務です。たとえば、書類作成の定型業務、数値データの集計・分析、簡単な法律相談へのQ&A対応などは、AIが代替する可能性があります。

税理士の記帳代行業務は、クラウド会計ソフトの普及により、すでに一部自動化が進んでいます。銀行口座やクレジットカードのデータを自動で取り込み、AIが仕訳を提案する機能が実用化されています。

契約書のチェック業務も、AIによる自動化が進んでいる分野の一つです。リーガルテック企業が提供するAI契約書チェックサービスは、弁護士が行っていた契約書レビュー業務の一部を代替し始めています。

ただし、これらのAI・自動化は、士業を完全に代替するものではありません。AIは定型的な業務を効率化するツールであり、最終的な判断や複雑な案件の対応は、人間の士業が行う必要があります。

今後も需要が見込まれる士業分野

AI時代においても、人間の士業にしかできない業務は数多く存在します。特に以下のような分野は、今後も需要が見込まれます。

複雑な判断を伴う業務は、AIが代替しにくい分野です。たとえば、相続税の節税対策、M&Aの税務スキーム構築、複雑な訴訟案件の戦略立案などは、高度な専門知識と経験に基づく判断が必要であり、人間の士業にしかできない業務です。

顧客とのコミュニケーションを伴う業務も、人間の士業の強みです。顧客の悩みを聞き取り、適切なアドバイスを提供し、信頼関係を構築することは、AIには難しい領域です。特に、相続や離婚など、感情的な要素が絡む案件では、人間の士業の対応が求められます。

新しい法律・制度への対応も、人間の士業の重要な役割です。法律や税制は頻繁に改正されており、最新の情報をキャッチアップし、顧客に適切なアドバイスを提供することが必要です。

士業連携によるワンストップサービスの重要性

AI時代において士業が生き残るためには、複数の士業が連携してワンストップサービスを提供することがますます重要になります。顧客のニーズは複合的であり、一つの士業だけでは対応しきれないケースが増えています。

たとえば、事業承継の案件では、税理士(相続税・事業承継税制)、弁護士(株式譲渡契約・遺言書作成)、司法書士(登記手続き)、社労士(従業員の雇用継続)など、複数の士業の専門知識が必要となります。これらの士業が連携してワンストップでサービスを提供できれば、顧客満足度が向上し、競争優位性を確保することができます。

Honorsのような士業連携コミュニティでは、異なる分野の士業が集まり、情報交換や案件紹介を行っています。このようなネットワークに参加することで、自分の専門外の案件にも対応できるようになり、顧客への提供価値を高めることができます。

士業を目指す方へ:キャリア選択のポイント

これから士業を目指す方に向けて、キャリア選択のポイントをご紹介します。どの士業を選ぶかによって、その後のキャリアや収入が大きく変わります。

自分に合った士業の選び方

士業を選ぶ際には、以下のポイントを考慮することをお勧めします。

まず、自分の興味・関心に合った分野を選ぶことが重要です。士業の仕事は専門性が高く、長期間にわたって同じ分野で活動することになります。興味がない分野では、学習のモチベーションを維持することが難しく、仕事へのやりがいも感じにくくなります。

次に、自分のバックグラウンドを活かせる士業を選ぶことも有効です。たとえば、理系のバックグラウンドがある方は弁理士、経理・財務の経験がある方は税理士や公認会計士、人事・総務の経験がある方は社労士など、これまでの経験を活かせる士業を選ぶことで、資格取得後のキャリア構築がスムーズになります。

また、資格取得にかけられる時間と費用も考慮する必要があります。司法試験や公認会計士試験は合格までに数年かかることが一般的であり、専門学校の費用も高額です。一方、行政書士試験は独学でも合格可能であり、比較的短期間で資格取得を目指すことができます。

働きながら資格取得を目指す方法

士業の資格は、働きながら取得することも可能です。特に、社労士、税理士、行政書士などは、会社員として働きながら資格取得を目指す方が多い資格です。

働きながら資格取得を目指す場合のポイントは、以下の通りです。

まず、計画的な学習スケジュールを立てることが重要です。平日は帰宅後に2~3時間、休日は5~6時間など、無理のない学習時間を確保し、継続的に学習を進めることが大切です。

次に、効率的な学習方法を選択することも重要です。通勤時間を活用したスマートフォンでの学習、オンライン講座の受講、専門学校の土日コースへの通学など、自分のライフスタイルに合った学習方法を選びましょう。

また、職場の理解を得ることも大切です。資格取得を目指していることを上司や同僚に伝え、繁忙期の調整や試験前の休暇取得について理解を得ておくと、学習に集中しやすくなります。

未経験から士業へのキャリアチェンジ

異業種から士業へのキャリアチェンジを検討している方も多いでしょう。未経験から士業へキャリアチェンジする際のポイントをご紹介します。

まず、資格取得前から士業事務所でのアルバイトやパート勤務を始めることも有効です。実務を経験しながら資格取得を目指すことで、合格後すぐに即戦力として活躍することができます。

次に、転職エージェントを活用することも検討しましょう。士業専門の転職エージェントは、未経験者向けの求人情報を持っていることがあり、キャリアチェンジのアドバイスも受けることができます。

また、これまでの業界経験を活かせる専門分野を見つけることも重要です。たとえば、不動産業界で働いていた方が司法書士になれば、不動産登記の分野で強みを発揮できます。IT業界で働いていた方が弁理士になれば、ソフトウェア特許の分野で活躍できる可能性があります。

まとめ:士業で年収1000万円を達成するために

本記事では、8士業・10士業の平均年収ランキングを中心に、各士業の年収実態、資格取得の難易度、将来性などについて詳しく解説してきました。最後に、記事のポイントをまとめます。

士業の平均年収は、弁護士・司法書士で約765万~1,000万円、税理士・公認会計士で約856万円、社会保険労務士・中小企業診断士が含まれる分類で約947万円、弁理士・不動産鑑定士で約700万円、行政書士で約551万円という結果となっています。統計データの取り方によって数値は異なりますが、多くの士業が日本人の平均年収を上回る水準にあることは間違いありません。

年収1000万円を達成している士業の割合は、士業によって大きく異なります。独立開業の割合が高い弁護士や税理士では、経験年数15年以上のベテラン層で年収1000万円超の割合が高くなっています。一方、勤務型の士業では、年収1000万円に達するケースは限定的です。

士業の年収を上げるためには、専門分野の確立、ダブルライセンスの取得、士業ネットワークの構築、デジタル化への対応、独立開業と規模拡大などの方法が有効です。特に、他の士業との連携を深め、顧客にワンストップサービスを提供できる体制を構築することが、今後ますます重要になってきます。

AI時代においても、複雑な判断を伴う業務や顧客とのコミュニケーションを伴う業務は、人間の士業にしかできない領域です。専門性を高め、付加価値の高いサービスを提供することで、士業としての競争力を維持・向上させることができます。

士業を目指す方は、自分の興味・関心やバックグラウンドに合った士業を選び、計画的に資格取得を目指してください。そして、資格取得後も継続的に学習・成長を続けることで、年収アップとキャリアの充実を実現していただければ幸いです。

士業同士の連携や情報交換に興味がある方は、Honorsのような士業連携コミュニティへの参加もご検討ください。全国の信頼できる士業とのネットワークを構築することで、顧客への提供価値を高め、自身の成長にもつなげることができます。

参考・出典

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