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士業のパートナー解消を円満に進める実務手順|法的リスクと顧客保護の要点
士業のパートナー解消を円満に進める実務手順|法的リスクと顧客保護の要点
税理士、弁護士、公認会計士といった士業において、志を同じくして始めた共同経営も、時の経過とともに価値観や経営方針にズレが生じることは少なくありません。パートナー解消は単なる別離ではなく、法的権利の整理や顧問先の分配など、極めて緻密な実務が求められます。適切な手順を踏まずに解消へと踏み切れば、事務所の信用失墜や訴訟リスクを招く恐れがあります。本記事では、士業がパートナーシップを解消する際に直面する課題と、円滑に手続きを進めるための具体的なポイントを解説します。
目次
士業におけるパートナー解消の主な背景
士業事務所がパートナー関係を解消する理由は多岐にわたりますが、その多くは感情的な対立だけでなく、構造的な問題に起因しています。まずは、解消を検討すべき典型的なケースを整理しましょう。
経営理念の相違と成長スピードの乖離
事務所開設当初は一致していた目標も、数年が経過すると変化が生じます。一方はさらなる拠点拡大を望み、もう一方は地域密着で質の高いサービスを維持したいと考えるようなケースです。経営スピードの差が埋まらなくなると、投資判断や採用計画において意思決定が停滞し、事務所全体の成長を阻害する要因となります。このような状況では、お互いの発展のために別々の道を歩む決断が賢明な判断となる場合が多いといえます。
利益配分や業務負担への不満
パートナー間での業務量と報酬のバランスが崩れることも、深刻な亀裂を生みます。特定のパートナーに集客や実務が偏っているにもかかわらず、利益が均等に配分されている状態が続くと、貢献度の高い側に強い不満が蓄積されます。逆に、能力の低下や稼働時間の減少が見られるパートナーに対し、過剰な配当を出し続けることは、事務所の財務健全性を損なうリスクを孕んでいます。
解消手続きにおける法的・実務的なステップ
解消の合意に至った後は、感情を排除して法的な手続きを粛々と進める必要があります。士業法人の形態(税理士法人や弁護士法人など)によって必要な登記手続きも異なるため、専門的な視点が欠かせません。
共同経営契約書および定款の再確認
最も重要なのは、共同経営を開始した際に締結した契約書や、法人の定款の内容です。退社時の持分計算方法や、競業避止義務の有無、秘密保持に関する規定がどのように記されているかを確認します。もし明確な規定がない場合は、改めて「解消合意書」を作成し、後日の紛争を防ぐための証拠を残す必要があります。書面には、解消日、精算金額、支払い方法、そして双方が誹謗中傷を行わない旨などを明記します。
持分の払い戻しと資産の清算
法人の場合、退社するパートナーに対して持分の払い戻しを行います。この際、事務所の時価評価額を算出する必要がありますが、士業事務所の価値は目に見える資産だけでなく、顧問先との契約という「営業権(のれん)」が大きな比重を占めます。この評価額を巡って意見が対立することが多いため、公認会計士や専門のコンサルタントによる客観的な査定を導入することが、納得感のある解決への近道となります。
トラブルを未然に防ぐための留意事項
実務的な精算以上に困難を極めるのが、顧客や従業員への対応です。士業の資産は「人」であり、解消の進め方を誤ると、最悪の場合は双共倒れになる危険性があります。
顧問先の承継と営業権の取り扱い
どちらのパートナーがどの顧問先を引き継ぐのかは、解消における最大の争点です。基本的には「各パートナーが主担当として関与していた顧客を引き継ぐ」という形が一般的ですが、事務所のブランドで獲得した顧客については調整が必要です。強引な引き抜き行為は、顧客に不信感を与え、解約を招く結果となります。顧客第一の視点を持ち、丁寧な挨拶回りと承継説明を行うことが、士業としての社会的責任です。
従業員への説明と離職防止の重要性
パートナーの対立や解消は、従業員に大きな不安を与えます。信頼していたリーダーが去ることで、優秀なスタッフが同時に離職してしまう事態は避けなければなりません。解消が決定した段階で、今後の経営体制や待遇について誠実に説明し、動揺を最小限に抑える配慮が求められます。従業員がどちらの組織に属するかについても、本人の意向を尊重しつつ、業務に支障が出ないよう配置を検討する必要があります。
解消後の新たな展開:M&Aや事業承継の活用
パートナー解消は決してマイナスの出来事だけではありません。単独での経営に戻る以外にも、他事務所との合併(M&A)や、次世代への事業承継を加速させる契機と捉えることも可能です。例えば、残存するパートナーが事務所を維持しつつ、退社するパートナーの持分を外部の協力者に譲渡することで、新たなシナジーを生み出せる可能性があります。 honors(オーナーズ)では、こうした士業事務所の戦略的な再編を数多く支援しています。一人で抱え込まず、第三者の客観的な意見を取り入れることで、より有利な条件での解消が可能となります。
まとめ
士業のパートナー解消は、経営権、財産権、そして信頼関係が複雑に絡み合う難易度の高いプロセスです。感情的な対立を最小限に抑え、法的に不備のない形で進めるためには、早期の準備と専門家のアドバイスが不可欠といえます。顧問先や従業員を守り、自身の新たなキャリアを輝かせるためにも、戦略的な解消を目指しましょう。もしパートナーシップの維持に限界を感じているのであれば、まずは現状を整理し、最善の選択肢を模索することから始めてください。
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